
個人事業主として農業を始めるつもりだけど、開業届って必要なのかな?
こういう手続きって面倒だし、むずかしそうで気が引ける…。
やるべきこと、書き方を分かりやすく解説してくれている記事はないかな。
こんな方に向けた記事です。
- 開業届の前提知識
- 開業届を提出するメリットとデメリット
- 開業届を提出するタイミング
- 必要なものなど、具体的な手続きの方法
- 実際に使ってみてよかった会計ソフト
この記事は、Webプロモーションを中心とする農業経営支援企業のファームコネクトが監修しています。ネット販売支援、ホームページ制作、デザイン制作、補助金申請サポートなど、農業経営にまつわる様々な領域を支援しております。
野菜で月次売上200万円、とうもろこしで日次売上100万円超えなど、多数の販売実績があり、行政とも提携している組織です。
私たちも事業を始める際には開業届を提出しましたし、ファームコネクトには簿記2級保持者が2人いたり、そのうち一方は元税理士受験生だったり…と税務についてはなかなかの知識があります。
この知識をフル活用し、これから個人事業主として農業を始める方にむけて、開業届についてわかりやすく解説しますね。
とにかく早く開業届を出したい方へ
複雑な知識はいらないから、とにかく早く開業届を出したい!という方には開業freeeがおすすめ。
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では、本題に参りましょう!
農業における開業届の前提知識

まず最初に、開業届に関する前提知識を共有しておきましょう。
前提知識というより「よく質問されること」という表現のほうが正しいかも。
多くの方が疑問におもっていたり、勘違いしていることを最初に解説しておきます。
開業届って絶対提出しなきゃいけないの?必要性は?

開業届って面倒だから出さなくてもいいかな。売上もまだないし。なんか注意されてから出せばいいかな〜って思うんだけど、実際のところどうなの?
こんな疑問を抱く方が多いですよね。
結論から述べると、提出は必須です。
「開業の事実があってから1ヶ月以内に開業届を提出しなければならない」と、所得税法で定められています。
→ 税務研究会法令集
ファームコネクトも、まだ売上も利益もゼロのころに開業届を提出しました。
とはいえ、開業届の提出が遅れたところで罰則があるわけではありません。
そのため実際のところ「出しても出さなくてもいいよ〜」という状況になっているのです。
しかし、詳細は後述しますが開業の手続きは簡単ですし、開業届を出すことで赤字を翌年に繰り越すことができるなどメリットが多いです。
事業がうまくいかなくても、個人事業であれば廃業の手続きも簡単なので、迷ったらとりあえず開業届を提出するのがオススメです。
開業届を出したら確定申告しなきゃいけないんでしょ?

毎年確定申告でヒーヒーいってる人が多いなあ。開業届を出したら確定申告しなきゃいけないんでしょ?
このように考える方が多いですが、開業届を提出しても確定申告は必須ではありません。
所得(売上−費用)が38万円を超えていない限りは、確定申告をしなくても良いのです。
とはいえ確定申告をすれば赤字を翌年に繰り越せるので、確定申告をした方がおトクになります。
いまではfreeeなど、簡単に確定申告できるツールがあるので、そこまで確定申告を深刻に考える必要はありません。
農作物のネット販売を始めたんだけど新たに開業届を出す必要ある?
私たちがネット販売の支援事業をしていることもあり、よく農家さんから「ネット販売という新しい事を始めたから、開業届をまた出さないとダメでしょ?」と聞かれます。
結論から述べると「すでに農業の開業届を出しているのであれば、新たに開業届を出さなくてOK」です。
農業で開業届を提出するメリット

前提知識を共有したところで本題に入っていきましょう。
まずは開業届の必要性について、メリットと織りまぜてお伝えしていきます。
結論から述べると、開業届を出すことで以下のメリットが生じます。
- 青色申告できる
- 信用が得られる
- 小規模企業共済に加入できる
それぞれ解説していきますね。
青色申告できる
開業届と一緒に「青色申告承認申請書」を提出すると、確定申告の際に青色申告ができるようになります。
確定申告には「白色申告」と「青色申告」があります。
青色申告の方がメリットが多いのですが、帳簿付けが難しく、元々は白色申告が主流でした。
しかし近ごろは便利な会計ツールができたことで帳簿付けが簡単になったことから、青色申告が主流です。
白色申告にするメリットは皆無といっても過言ではありません。
青色申告にすると以下のメリットが生じます。
- 赤字を3年繰り越せるため、翌年の税金が減る
- 最大65万円の控除が受けられる
- 家族への給与を経費にできる
- 貸倒引当金を計上できる
これら4点が青色申告のメリット。下の3つについて詳しく述べていきます。
最大65万円の控除が受けられる
控除というとむずかしく聞こえますが、天引きしてくれることです。
所得金額(売上-費用)から最大65万円を天引きされるので、そのぶん税金が安くなります。
家族への給与を経費にできる
家族で農業を営む方も多いはず。
青色申告をおこなうと、15歳以上の家族への給与をすべて経費にできます。
そのぶん税金を減らせるのが大きなメリットです。
とはいえ、あまりに多額を経費にすると税務署から指導を受けるので注意が必要です。
あくまで常識の範囲内にしておきましょう。
貸倒引当金を計上できる
貸倒引当金とは、取引先が倒産するなどしてお金を回収できなくなる可能性を考えて、事前に損失を見積もっておく金額です。
JAや市場に卸しているうちはあまり利用する機会がありませんが、例えばレストランに作物を卸すなど、取引先ができると貸倒引当金を重宝する機会が増えるでしょう。
ここまでが青色申告のメリットです。
開業届を提出するメリットに話を戻します。
信用が得られる
開業届を出すことで「ちゃんと事業をやってるんだな」という信用が得られます。
その結果、以下のことができるようになるのです。
- 事業用の銀行口座が開ける
- 融資を受けられる
- 農園のネットショップを開設した際に、クレジットカード決済やQRコード決済を導入できる
- 受けられる補助金の幅が増える
事業用の銀行口座は必須ではありませんが、あった方がお金の管理が簡単になります。
また、将来的に農作物のネット販売を考えている場合、クレジットカード決済は必須です。
補助金については「農業の設備投資で使える補助金まとめ」でご紹介しています。

小規模企業共済に加入できる
会社員でいう退職金のようなもので、事業を辞めるときに、それまでの積立金に応じて給付金を受け取れるシステム。
ある程度の安定した収入が見込める方は加入しておくのがベターです。
ちなみに、積み立てたお金は所得控除の対象になるので、節税対策にもなりますよ。
詳細は、中小機構HPにてご覧ください。
農業において開業届を提出するデメリット

脱サラ就農のケースでは、失業手当がもらえないというデメリットがあります。
脱サラ就農以外の方にとっては、デメリットはありません。

農業の開業届を提出する際に必要なものは?
これらが最低限必要なものです。
ほかにも、家族以外の従業員を雇う場合は「給与支払事務所等の開設届出書」が必要となります。
あとは、開業届には屋号を記入する欄があるので、事前に考えておくと良いですね。
※屋号は必須ではありません。詳細は「農家が個人事業主になるとき屋号はどうすべき?決め方と注意点を解説!」をご覧ください。

農業で開業届を提出するタイミング

原則、個人事業主として開業してから1ヶ月以内に提出する必要があります。
また、青色申告できるようにするための「青色申告承認申請書」は開業から2ヶ月以内に提出する必要があるので注意ですね。
できれば、開業届と青色申告承認申請書は一緒に出してしまうのが吉です。
どちらも簡単なので一気に終わらせてしまいましょう。
農業の開業届はどこで手に入る?

国税庁HPでダウンロード、あるいは税務署にてもらえます。
ファームコネクトは事前にダウンロードして記入したものを、税務署に持参して提出しました。(詳細は後述しますが、いろいろと聞きたいことがあったので)
青色申告承認申請書も国税庁HPにてダウンロード可能なので、事前にダウンロード・記入しておくことを推奨します。
ちなみに開業届の書き方は以下の動画がわかりやすいです。この動画のとおり書いたら問題なくイケました。
ちなみに農業の場合、職業欄は「農業」、屋号は「〇〇農園」など、所得の種類は「事業所得」となることを留意ください。
郵送は可能なのか?
開業届および青色申告承認申請書は郵送でも提出可能です。
郵送先は管轄の税務署である点に注意が必要。
開業届の郵送については「会社設立完全ガイド」さんの記事が、青色申告承認申請書の郵送については「ママタックス」さんの記事がわかりやすく解説してくれているので参考にしてみてください。
ただ郵送だと切手・封筒を準備したりといろいろ面倒なので、個人的には直接提出することを推奨します。
農業の開業届はどこに提出するの?

先ほど述べたとおり、管轄の税務署に提出します。
管轄の税務署は国税局HPにて検索可能です。
管轄外の国税局に提出しても開業届を提出したことになりませんのでご注意ください。
開業届の控えはどうすべき?
開業届の控えはあらゆる場面で必要となるので大切に保管しておきましょう。
もし紛失した場合は再発行も可能です。
再発行するには「保有個人情報開示請求書」を税務署に提出する必要があります。
開業届とおなじく窓口・郵送にて提出可能です。
ただ交付までに2週間以上かかってしまうので、できるだけ失くさないように心がけましょう。
農業の開業届を提出したあとは…

開業届を提出したら、帳簿付け(会計)を始める必要があります。会計関連もメンドクサイですよね…。
税理士を雇ってしまえば楽ですが、独立したての個人事業主にそんなお金はないケースも。
そこでオススメなのが「会計ソフト」です。
いまの会計ソフトは本当に便利なものばかりで、専門知識がなくても簡単に帳簿をつけることができますし、そのまま確定申告まで出来てしまいます。
ファームコネクトもつい先日に確定申告をしたのですが、普段から会計ソフトを使っていたおかげで、ほんの20分ほどで完了しました。
会計ソフトにも色々ありますが、特に人気なのは以下の3つです。
※会計ソフトは人気なものを使った方がいいです。なぜなら利用者が多いほど、使い方を検索したときに多くの情報が出てくるから。
上で紹介した動画「税理士が開業届を書いてみた」の大河内先生も、この3つの会計ソフトをオススメしています。
ファームコネクトは色々と調べてみたのですが、最終的にfreeeが一番良いという結論に落ち着きました。
理由は「メニューがシンプルで使いやすかったから」です。
ただでさえ複雑かつ面倒な会計処理。
せめてメニューや帳簿の画面はシンプルでいてほしくないですか?あまりゴチャゴチャしていても混乱してしまいます。
freeeはメニューや画面表示がシンプルで、初心者でも安心して使えるように感じました。
「自分は会計初心者である」と思う方にはfreeeを強くオススメします。
無料のプランもあるので、一度登録してみてはいかがでしょうか?
…記事全体を通してfreeeをオススメしてしまっていますね。笑
freeeの良さは、様々なサービスをワンストップで利用できること、そして全てのサービスがシンプルで使いやすいことです。
他のサービスよりも有料プランの料金が安価な点もいいですね。
正直頭ひとつ抜け出ている存在なので、もし悩んだらfreeeにしておけば後悔することはありません。
農業における開業届まとめ

以上、農業における開業届についてでした。
開業届と聞くと面倒なイメージがあり、なんとも足が重いですよね。
とはいえ、やってみると意外と簡単ですし、すぐに終わってしまうものです。
私たちファームコネクトが開業の手続きをした際も「え、もうおわり?帰っちゃうけどいいの?」という感想を抱きました。
法人化となるとなかなか大変ですが、個人事業主であれば簡単なのでぜひとも開業届は提出しておきたいところ。
また、わからないことは税務署で聞くのが一番です。
ファームコネクトも開業届を出す際に「目薬は経費にできるか?」とか「銭湯でパソコン作業したときは経費にできるか?」とか細かい質問をしまくりました。
※どちらも経費にできませんでした。
税務署の職員さんはすごく丁寧にお答えくださりましたよ。
税務署と聞くとなんとなくお堅いイメージがありますが、そんなことはないので気軽に赴いてみてはいかがでしょう?
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
本記事がすこしでも参考になれば幸いです。質問等あればお気軽にコメントくださいね。