近頃は資材が高騰していて、どんどん利益が減っていくなあ…。
野菜などの農産物に付加価値をつけて、今よりも高単価で販売しないと生活が苦しくなる。
農産物に付加価値をつけるには、具体的にどうすればいいのか知りたい。
こんな方に向けた記事です。
- 「付加価値」の言葉の定義とは?
- 農産物自体に付加価値をつける方法
- 間接的に付加価値をつけて、高単価で販売する方法
この記事は農園のWeb活用支援団体ファームコネクトが書いています。
通販支援、ホームページ制作、クラウドファンディング支援など、農業特化のWeb事業として様々なサービスを展開しています。
野菜で月次売上200万円、とうもろこしで日次売上100万円超えなど、多数の販売実績があり、行政とも提携している組織です。
→ファームコネクトの事例紹介
今回は、多数の販売実績を残してきた知見をもとに「野菜に付加価値をつけて高単価で販売する方法」についてお伝えしていきます。
そもそも付加価値とは?
よく「付加価値」という言葉を聞きますが、定義が意外と曖昧だったりします。
そこでまず最初に、「本記事における付加価値の定義」を共有しておきますね。
本記事における付加価値の定義
先ほど述べたとおり、「付加価値」は曖昧な言葉です。
例えば、会計の分野では以下のような意味となります。
「労働によって付け足された価値」を数値化したもので、いくつかの数値をもとに、具体的な数値として算出できます。
【生産性の指標】付加価値とは?定義、分析方法、比較、業種別の事例
算出方法は、
控除法:売り上げから原材料費や外部注文費用などを差し引いて計算
加算法:人件費や減価償却費などを足して計算
の2つがあります。
これによって算出された数値を「付加価値額」として、企業の財務状況を測る指標としています。
ちょっと難しいですが、本記事においては「そんな意味もあるんだなあ」程度で大丈夫ですので、そのまま読み進めていただければと。
そして、以下の方が重要です。一般的にビジネスの場面で使われている「付加価値」の意味は以下の通り。
付加価値とは、商品やサービスが本来持っている価値に、プラスα(アルファ)で付け加える価値のことを指します。
他社の類似商品と明確な違いを打ち出すことで、顧客にアピールし売上の拡大も狙うのが目的です。
付加価値とは?正しい使い方や計算方法、価値の高め方
要するに、+αの価値をつけて、売価を上げたり、他社の製品よりも売れやすくすることですね。
本記事を読んでいるあなたは、あくまで「野菜を高単価で売り出して利益を上げたい!」という考えだと思うので、ここでは後者を「付加価値の定義」として使用します。
野菜などの農産物に付加価値をつける方法は2つある
さて、我々ファームコネクトは、野菜に付加価値をつける方法として以下の2種類があると考えます。
- 直接的に付加価値をつける
- 間接的に付加価値をつける
直接的なものとは、その名の通り直接的に野菜の価値を上げるもの。
例えば有機栽培をしたり、加工品にすることが挙げられます。
間接的なものとは、農産物自体の価値は上げずとも、魅力の伝え方を工夫したり、ブランディングすることで、消費者にとっての価値を上げることです。
例えば同じ農園の農産物でも、メディア出演することで拍がついて高単価でも売れるようになります。
これも一つの付加価値のつけ方ですね。
「直接的に付加価値をつける方法」「間接的に付加価値をつける方法」それぞれについて具体的に述べていきます。
野菜に「直接的に」付加価値をつける方法
まずは野菜に「直接的に」付加価値をつける方法です。全部で3つ紹介していきますね。
加工品にする
野菜にもよりますが、大半の野菜は常食される品であるため、「安さ」を求められやすいのが事実です。
そのため高単価で販売するには、加工品にすることで「野菜」のカテゴリーから外し、「ジュース」や「ドレッシング」にすることが求められるでしょう。
ちなみに、加工品開発をはじめとする6次産業化は注目されやすいこともあり、メディア受けもいいです。
例えば、千葉県船橋市の芳蔵園という果樹農園さんは、「梨のドライフルーツ」を開発したことで、多数のメディア(読売新聞社などの主要新聞社全社と、地元メディア)に取り上げられました。
メディア露出することでブランディングにもつながるので、強くオススメしたいですね。
ファームコネクトは芳蔵園様と協業して、商品開発支援サービスを展開しているので、加工品に興味のある方はご覧ください。
加工品の事例は「6次産業化の商品には何がある?一覧でご紹介」にてご覧いただけます。
新鮮な状態で届ける
野菜は新鮮なほど美味しい…これは誰もが実感している事実だと思います。
しかし、実際のところ市販の野菜は新鮮ではないものも多いですよね。
だからこそ、例えばインターネットを活用して産直通販をしたり、スーパーの地場野菜コーナーに野菜を卸すなどして、野菜を新鮮な状態で消費者にお届けすることが付加価値に直結します。
もちろん、新鮮であることをホームページやPOPを活用して魅力的に伝えることが必須です。
「新鮮で美味しい野菜が食べたい」というニーズは色濃く存在するので、うまく伝えることができれば、今より高単価であっても消費者が納得して購入してくれるでしょう。
安心安全を保障する
例えば減農薬栽培をするなど、安心や安全を付加価値にすることも可能です。
(もちろん慣行栽培でも安全性は十分ですが、あくまで「消費者にとっての分かりやすさ」が大事)
これについても「新鮮な状態で届ける」同様、しっかり消費者にアピールする必要があります。
安心・安全に野菜を栽培しているけど、それを十分に消費者にアピールできなければ、なかなか単価を上げていくことは難しいのが事実です。
野菜に「間接的に」付加価値をつける方法
次に「間接的に」野菜に付加価値をつける方法について。全部で5つお伝えしてきますね。
HPやSNS、POPで魅力を伝える
これまで何度か述べていますが、どれだけこだわって野菜を栽培しようとも、それを伝えないと消費者にとっては他の野菜と変わりません。
特に、この「伝える」という部分に注力している農家さんはまだまだ少ないため、ここに注力するだけで頭一つ抜け出すことができますし、高単価で販売していくことが可能となります。
「そんなこと言っても、うちは他の農家と同じことしかしておらず、アピールできる部分がない」と考える農家さんが多いですが、少し掘り下げてヒアリングしてみると、アピールできる点がどんどん出てきたりします。
重要なことは「自分がどう思うか」ではなくて、あくまで「消費者にとって、どうなのか」を考えること。
とはいえ長年農業に携わっていると、なかなかこの視点を持つことが難しいので、フラットな視点を持つ一般消費者から意見を聞いてみるのもいいかもしれません。
ストーリーを発信
今はまだ農家さんの情報発信者が少ないためブルーオーシャンですが、将来的には農家さんの発信者が増加すると思います。
理由は単純で、SNSを使いこなせる世代の就農者が増えるからです。
農家さん自体の数は減っていくのですが、SNSを使う農家さんは増えていくはず。
そうすると、皆が野菜の魅力を伝えるようになり、「味の違いだけ」で勝負することは難しくなっていくでしょう。(もちろん現状は非常に有効なので、どんどん魅力を伝えるべきです)
その結果、「誰から買うか」が重要になっていくのです。
SNSマーケティングの世界でも、USP(その商品独自の機能性)ではなく、MSP(商品を販売・紹介している人)を判断基準にした購買活動が増加している…という傾向が話題になっています。
特に農産物は口に入れるものであり、安全性が重視されやすいので、この傾向は顕著になるはず。
さて、この傾向が進んだ際、消費者はなにを元に購入判断するのかというと、「野菜を育てている人の人間性」です。
もし、その人間性が信用できるのであれば、その人が作っている野菜も美味しいし、安心して食べられるに違いない…という考えに至ります。
だから、農家さんはSNSやホームページを使い、積極的に自己開示して、差別化していくことが重要です。
・なぜ農家になったのか?
・なぜその野菜を栽培し始めたのか?
・どんな苦労があったか?
・どんな想いで野菜を育てているのか?
こんなストーリーを語ることで、あなたから野菜を買いたい!と思ってくれる方(=ファン=固定客)が生まれます。
※ ちなみに、人にウケるストーリーには「型」があります。この型通りにストーリーを構築すれば、ちゃんと読み進めてもらえるストーリーが出来上がりますよ。「神話の法則」あるいは「ヒーローズジャーニー」で検索してみてください。
希少性を持たせる
価値の源泉は希少性です。
あくまで例え話ですが、なんてことない普通の水でも、砂漠では1万円でも欲しい!という人もいることでしょう。
そして人は希少性に惹かれることが、行動経済学でも実証されています。
このことから様々な企業が「期間限定」「数量限定」を打ち出して、広告を出しているのです。
この希少性を野菜販売にも活かせるといいですね。
例えば、毎年数本だけ取れる希少なネギを、1本1万円で売っている方もいます。
参考:なぜネギ1本が1万円で売れるのか?
人は希少性のあるものには高いお金も払えるものですので、希少性を打ち出していくことが、単価を上げるうえでは重要です。
(もちろん高いお金を払うかは人によるので、お金がある人に対して商品を宣伝するというマーケティングスキルも大切ですね)
表彰され、権威を獲得する
表彰される=直接野菜の価値は上がっているわけではありません。
しかし、「表彰されている=美味しいに違いない」というイメージを消費者に与えることができ、間接的に価値が向上します。
これもしっかり消費者にアピールできるか否かが重要ですね。
野菜に付加価値をつけ、高単価で販売しよう!
以上、野菜の価値を上げるブランディング手法でした。
全体を通して、「消費者にしっかりアピールすること」が重要です。
ホームページを作ったり、SNSを作ったり、消費者の方と直接つながる場所を作ることが、付加価値を生む第一歩であると言えるでしょう。
うまくアピールして、価格競争から抜け出していきましょう!
本記事が少しでも参考になれば幸いです。